ミュージックワークショップ東京vol.7レポート

3/7@西荻窪studio UEN14:00〜17:00

 

3月7日、梅の花がそこかしこで綻びを見せて、いよいよ春がそこまでやって来ている、そんな予感を抱き始めた季節に、染み入るような寒さと共に、東京にはいささか季節外れな雨が降った。 

地面に染み込むような静かなこの雨も存外に悪くはない。そんな事を思い、私はかじかむ手をポケットの中で暖めながら、西荻窪の音楽スタジオへと向かった。

数人の有志で始まった「ミュージックワークショップ東京」、それも今回で七回目を数える。少しずつ、だが確実にその集まりは広がりを見せている。私は昨年の一回を除いてこれまでに全ての回に参加させていただいているが、毎回新たな発見があり、新たな出会いがある。

「敬意を抱かずにはいられない」ほどの技術と知識を持った匠のゲストインストラクターを迎えて、音楽を演奏し、そしてそれを反芻する。そういった場は、私は他には数多くは知らない。

楽器演奏者たちは、日々孤独な練習作業、反復作業を通じて己の技術を研鑽する。芸事に手を染めてしまった人間たちに課せられた悦びの一つでもある。だが、そういった作業の中では、ややもすると独善的で主観的な状況に陥る事も少なくない。遮光された世界のように、どうしても光が拡散しない。視界が、拓けて来ないのだ。

そこに光を差し込ませてくれる場の一つ、それがこのワークショップの幾つかの意義の内の一つだと私は感じている。

今回のゲストインストラクターは、コントラバス奏者の吉野弘志氏。前述したように、「敬意を抱かずにはいられない」ほどの技術と知識を持った稀有な音楽家の一人である。時に外から音楽を見守り、また時にはその中に自ら歩みを進めて、音楽を俯瞰し、分析して私たち参加者と議論をしてくれる。「教える」という地平に立ちながら、氏の視線は驚くほどに私たちと変わらぬ高さにあった。

また、今回に至っては、ドラム奏者の千光士実氏のゲスト参加もあった事も手伝って、多角的でありながらも、上等な刃物のように鋭い意見の交換が活発に行われた。

幾重にも織り成された重層的な音楽の可能性、その深淵が私たちに穏やかな光を差し込ませたのである。

時間にして三時間強のワークショップ。まさに「光陰矢のごとし」、瞬く間にその至福の時間は過ぎ去っていった。

スタジオから出た時、私は自らが上気している事に気付くと同時に、大変に心地良い疲れを感じた。それは、そこでしか得る事の出来ない快感である。

汗ばんだ私の額に、冬の名残のような冷たい雨が、滴った。

 

ミュージックワークショップ東京実行委員会 福島剛